2023年9月27日水曜日

明治安田生命保険事件・東京地判令和 5年 2月 8日・労経速2515-3

評価目的有期契約に更新上限をつけ、雇止め → 有効とした

vs

試用期間満了時に留保解約権行使

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第3 争点に対する判断
 1 争点(1)(原告と被告との間で無期労働契約が締結されたか)について
  (1) 証拠(書証略)によれば、被告の営業職員の雇用形態等については、以下のとおりであると認められる。
   ア 被告においては、営業職員として採用されることを希望する者は、被告との間でアドバイザー見習候補契約(期間1か月)を締結して、研修を受け、生命保険一般課程試験の合格を目指す。
   イ 被告は、生命保険一般課程試験に合格し、健康状況が良好である等の一定の条件を満たした者との間で、アドバイザー見習契約(有期労働契約)を締結する。アドバイザー見習契約については、契約期間が第Ⅰ期間(1か月)と第Ⅱ期間(3か月)に分かれている。
   ウ アドバイザー見習契約の第Ⅱ期間中に、アドバイザーB(Ⅰ号給)として採用されるための格付基準(本件規程10条。本件採用基準)を満たした者は、MYライフプランアドバイザーとして、被告との間で無期労働契約を締結する。MYライフプランアドバイザーには、アドバイザーBのほかに、アドバイザーA、アドバイザーS等があるところ、アドバイザーBは、MYライフプランアドバイザーとして採用される者の最初の資格と位置付けられる。
  (2) 本件見習契約についても上記(1)イで認定した枠組みに従って締結されたと認められるところ、本件見習契約(書証略)においては契約期間が明示的に定められている(第Ⅰ期間は1か月間、第Ⅱ期間は最大3カ月間)から、本件労働契約は有期労働契約であると評価すべきであり、他に原告と被告との間で締結された契約はないから、原告と被告との間で無期労働契約が締結されたとは認められない
  (3) 原告は、本件見習契約の期間中に本件採用基準を満たせばMYライフプランアドバイザーとして採用されるから、当該期間は労働者の適性を評価するための期間であって、これを試用期間と評価すべきである旨を主張する。しかしながら、労働者の適性を把握するために有期労働契約を締結すること自体は許容されているところ、本件見習契約の期間においては、労働者の適性を評価することが予定されているとしても、さらには実態としてはほとんどの者がアドバイザーBに採用される(人証略)としても、本件見習契約においてはその終期が明示的に定まっている(第Ⅰ期間、第Ⅱ期間を通算すると4カ月が限度となる。)以上は、これを試用期間と解することはできないというべきである(本件では期間の満了により本件見習契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立しているというべきであって、最高裁平成元年(オ)第854号同2年6月5日第三小法廷判決・民集44巻4号668頁の射程は及ばないと解すべきである。)
 原告は、本件見習契約を有期労働契約と解すると、労働契約を容易に解消することが可能になるから、試用期間について積み重ねられてきた判例法理の潜脱スキームである旨主張するが、労働者の適性を把握するために有期労働契約を締結すること自体は許容されていることからすると、試用期間について積み重ねられてきた判例法理の潜脱になるとまではいえない。
 2 争点(2)(更新の合理的期待の有無、申込み拒絶の客観的合理性・社会的相当性の有無)
  (1) 証拠(書証略)及び弁論の全趣旨によれば、本件見習契約においては、第Ⅱ期間の更新は2回である旨が明確に定められているところ、原告については更新が2回された後に、被告は、本件通知を行い、本件見習契約を期間満了により終了させたと認められる。そうだとすると、本件見習契約が、これ以上更新されることについて、原告に合理的な期待があったとは認められない
  (2) 原告は、採用基準を満たせばMYライフプランアドバイザーとして採用されることについては合理的な期待があった旨主張するが、本件労働契約は有期労働であるのに対し、MYライフプランアドバイザーとしての雇用契約は無期労働契約であり、全く別の契約であるというべきであるから、MYライフプランアドバイザーとして採用されるために労働契約を締結することは新たな契約の締結というべきであって、労働契約法19条2号にいう「更新」には該当しない。したがって、仮に原告に採用基準を満たせばMYライフプランアドバイザーとして採用されることについて期待があったとしても、これは労働契約法19条2号にいう合理的な期待があったとはいえない
 また、被告が雇止めをした経緯については、争いがあるものの、原告の供述等の証拠(証拠略)に基づいたとしても、原告は①令和2年7月1日午後6時30分頃、「このセンターは、おかしい」などと発言しながら、持っていたバッグを床に強く落としたこと、②同年7月9日に適応障害により3カ月の休養が必要と診断され、その後、現に療養していたことが認められるから、少なくとも、本件採用基準のうち「健康状況が良好であること」「活動・成果状況、教育受講状況等から判断してMYライフプランアドバイザーとしての職務遂行に必要な能力、適性及び意欲を有すると認められること」を充足せず、本件採用基準には該当しなかったと認められる(原告は、上記①の言動が仮にEセンター長からのハラスメントが契機となった旨を主張するが、そのような契機があったとしても、上記①の言動を行うことが正当化されるわけではない。また、原告は、被告が提出した、アドバイザーBとして採用しない理由に関する証明書(書証略)に、「健康状況が良好であること」についての記載がないとも主張するが、そうだとしても、原告の健康状況が良好でなかったことに変わりはない。したがって原告の主張を踏まえても、原告は本件採用基準には該当しなかったとの判断は左右されない。)。そうすると、いずれにせよ原告にMYライフプランアドバイザーとして採用されることについての合理的な期待があったとはいえない。
  (3) 原告は、雇用継続に向けた期待を保護すべき必要性は変わらないから、同号を類推適用すべきである旨主張するが、本件労働契約は有期労働であるのに対し、MYライフプランアドバイザーとしての雇用契約は無期労働契約である以上、類推適用の基礎を欠くというべきであるから、原告の主張は採用できない
第4 結論
 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は、理由がない。

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