副業による健康悪化について安全配慮義務違反を認めた
従業員が望んだ勤務増であっても責任は軽減されない(過失相殺4割)
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ウ 控訴人主張に係る被控訴人Y1社の注意義務ないし労働契約上の安全配慮義務違反の有無
(ア) 控訴人は、被控訴人Y1社及びa社との各労働契約に基づく控訴人の労働日数及び労働時間数、あるいは、被控訴人Y1社との労働契約に基づく控訴人の労働日数及び労働時間数を前提として、被控訴人Y1社は、控訴人の心身に異常を来すことがないよう控訴人の業務負担軽減のため、被控訴人Y1社での労働時間を軽減し、又は、労働を制止すべき注意義務ないし労働契約上の安全配慮義務を負っており、これに違反したなどと主張する。 この点、前記アで指摘したとおり、控訴人についての労働日数及び労働時間数をみれば、法の趣旨に反した連続かつ長時間勤務がなされていたことは明らかというべきである。
そして、前記1(2)ク、(3)キに認定したとおり、被控訴人Y1社において、その勤務シフトは、同一店舗に勤務する従業員間でシフト表の案を作成し、Cが各店舗を巡回した際にそのシフト表の案を確認し、承認をするという仕組みの下、その内容が確定されていたこと(前記1(3)キ)、Cが勤務シフト調整のための面談に立ち会うなどしていたこと(前記1(2)ク)に照らせば、Cは、被控訴人Y1社との労働契約に基づく控訴人の労働日数及び労働時間数を認識し、あるいは認識し得る立場にあったと解される。
また、前提事実(2)ア、ウ、前記1(3)オ、カで認定したとおり、a社は、d店において24時間営業を行うにつき、夜間運営業務をb社に委託し、それが被控訴人Y1社に再委託されているという契約関係の下、控訴人が同一の店舗(d店)で給油所作業員として就労していたことに照らせば、被控訴人Y1社は、a社に問合せをするなどして、a社との労働契約に基づく控訴人の労働日数及び労働時間について把握できる状況にあったのであるから、控訴人のa社における兼業は、従業員が勤務時間外の私的な時間を利用して雇用主と無関係の別企業で就労した場合(雇用主が兼業の状況を把握することは必ずしも容易ではない場合)とは異なるということができる。
(イ) 被控訴人Y1社は、控訴人との間の労働契約上の信義則に基づき、使用者として、労働者が心身の健康を害さないよう配慮する義務を負い、労働時間、休日等について適正な労働条件を確保するなどの措置を取るべき義務(安全配慮義務)を負うと解されるところ、上記のような事実関係によれば、控訴人は被控訴人ら両名との間の労働契約に基づいて、157日という長期間にわたって休日がない状態で、しかも深夜早朝の時間帯に単独での勤務をするという心理的負荷のある勤務を含む長時間勤務(欠勤前の各期間における労働時間は、上記4(2)のとおり)が継続しており、被控訴人Y1社は、自身との労働契約に基づく控訴人の労働時間は把握しており、業務を委託していた被控訴人Y2社との労働契約に基づく就労状況も比較的容易に把握することができたのであるから、控訴人の業務を軽減する措置を取るべき義務を負っていたというべきである。
しかるに、被控訴人Y1社は、平成26年3月末頃には控訴人がa社との兼業をしている事実を把握したにもかかわらず、兼業の解消を求めることはあったものの、控訴人のa社における就労状況を具体的に把握することなく、同年7月2日に至るまで上記のような長時間の連続勤務をする状態を解消しなかったのであるから、控訴人に対する安全配慮義務違反があったと認められる。
(ウ) なお、既に認定説示したとおり、被控訴人Y1社及びa社との労働契約に基づく控訴人の連続かつ長時間労働の発生は、控訴人の積極的な選択の結果生じたものであることは否定できず、控訴人は、連続かつ長時間労働の発生という労働基準法32条及び35条の趣旨を自ら積極的に損なう行動を取っていたものといえる。
しかしながら、使用者である被控訴人Y1社には、労働契約上の一般的な指揮命令権があるのであり、控訴人が法の趣旨に反した長時間かつ連続の就労をしていることを認識した場合には、直ちにそのような状態を除去すべく、Cが控訴人の希望する被控訴人Y1社における勤務シフトを承認しない等の措置をとることもできたのであるから、上記のような控訴人による積極的な行動があったことは、安全配慮義務違反の有無の判断を直接左右するとはいえず、過失相殺の有無・程度において考慮されるにとどまるというべきである。
(エ) また、被控訴人Y1社としては、控訴人とa社の労働契約関係に直接介入してその労働日数を減少させることができる地位にはないものの、a社としても、兼業によって違法な長時間連続勤務の状態を継続してまで控訴人を自社の従業員として就労させることに固執するとは考えられず、控訴人に対して軽減措置を取るべき義務が否定されるものではない。
7 争点7(過失相殺の成否)について
(1) 控訴人は、被控訴人Y1社と労働契約を締結していたにもかかわらず、a社とも労働契約を締結し、被控訴人Y1社との労働契約上の休日(日曜日)にa社での勤務日を設定して連続勤務状態を生じさせ、Cから勤務の多さについて労働基準法に抵触するほか、自身の体調を考慮して休んでほしい旨注意され、5月中旬までにはa社の下での就労を確実に辞める旨約束した後も、別途金曜日にa社との労働契約に基づく勤務を入れたり、平成26年4月28日にg店における就労について話し合った際もGの意向に反して自ら就労する意向を通していた(かかる控訴人の行動・態度に照らせば、たとえ被控訴人Y1社が更に別の曜日を休日にするなどの勤務シフトを確定させたとしても、控訴人が独自に交渉するなどして、その休日にa社の下で就労し、または更に異なる事業所で勤務しようした可能性がある。)。
(2) 他方、被控訴人Y1社としては、いかに上述した契約関係に基づいて24時間営業体制が構築されているとはいえ、控訴人とa社の労働契約関係に直接介入してその労働日数を減少させることができる地位にあるものでもない(それゆえに、Cは、控訴人に注意指導してa社との労働契約を終了するよう約束を取り付けている。)。
(3) 被控訴人Y1社は基本的に日曜日を休日として設定していること、Cは控訴人に対し、労働法上の問題のあることを指摘し、また、控訴人自身の体調を考慮して休んでほしい旨注意をした上、控訴人に平成26年5月中旬までにはa社の下での就労を確実に辞める旨の約束を取り付けているにもかかわらず、控訴人が自身の判断において積極的に被控訴人らでの兼業を継続していたこと、適応障害発症の契機となった同年6月26日の事情聴取が必ずしも控訴人の利益を違法に侵害するものであったとはいえないことなど、本件に表れた諸事実を踏まえると、被控訴人Y1社が控訴人に対して賠償すべき損害額を算定するに当たっては、控訴人にも相応の過失があったと認められるのであり、4割の過失相殺をするのが相当と認められる。
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