2023年3月13日月曜日

近鉄住宅管理事件・大阪地判R4.12.5・ジャーナル131-2

 普通解雇の無効を主張した 解雇無効

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(1)新型コロナウイルス対策の不履行について

Yの業務はマンションの管理等であるところ、新型コロナウイルス禍においては、Yが管理するマンションの住民に不安を与えないようにすることが業務の遂行において必要であるといえ、Yが従業員に対して、感染防止対策の徹底を求める通知を繰り返し発出し、マスク着用等の徹底を求めていることも、その表れであるといえる。

そうすると、Yの従業員としては、使用者であるYの指示に従って、業務を遂行する際には、新型コロナウイルス感染防止対策を徹底しながら職務を遂行する義務を負っていたことになる。

ところが、本件マンションの住民から、Xに関して、「マンション内や通勤途中でお見かけした時は、マスクをされていません」、「いつお見かけしても、マスクをされていない」との連絡がなされているところ、その文言に照らせば、同住民は、Xがマスクを着用しないことが常態化していると認識していたこと、Xの主張・供述を前提としても休暇を取得していた令和3年5月6日に本件マンションの管理事務所を訪問した際もマスクを着用していなかったこと、管理事務所でマスクを外しており、着け忘れた状態で管理事務所の外に出たこともあること(X本人尋問調書4頁)、通勤途中にたばこを吸うためにマスクを外していたこともあること(X本人尋問調書19頁)などからすれば、Xは、本件マンションで管理員として業務を遂行する際や、通勤の際に、日常的にマスクを着用していなかったことがうかがわれる。そうすると、Xは、本件マンションの管理員として職務を遂行する際に、使用者であるYからの業務上の指示に従っていなかったことになる。

しかし、

① Xが過去にもYから同様の行為について注意を受けていたというような事情はうかがわれないこと、

② 潜在的には認定事実(2)の連絡をした住民以外にもマスクを着用しないXについて不快感や不安感を抱いた本件マンションの住民がいたことがうかがわれるものの、現実にYに寄せられた苦情は1件にとどまっていること、

③ Xの行為が原因となって、本件マンションの管理に係る契約が解約されるというような事態は生じていないこと、

④ E課長もXに対してマスク未着用に関する注意をしていないことを認めており、ほかに、YがXに対してマスク未着用に関する注意をしたことを認めるに足りる証拠もないこと、

⑤ Xが新型コロナウイルスに感染したことで、本件マンションの住民あるいはY内部において、いわゆるクラスターが発生したというような事態もうかがわれないこと

などからすれば、新型コロナウイルス対策の不履行に関する一連のXの行動が規律違反(パートタイマー就業規程45条2号)に当たるとはいえるものの、同事情をもって、Xを解雇することが社会通念上相当であるとまではいうことができない。

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Xは、…配転を拒否したら解雇されたことは、単に配転命令や解雇の無効にとどまらず、違法な行為である旨主張し、X本人もこれに沿う供述をする。

仮に、令和3年6月2日に、本件マンションからの配転命令が発令され、同配転命令が無効であるとしても、直ちに不法行為法上も違法となるものではなく、別途、不法行為法上、違法であるかについて検討が必要である。

既に説示したとおり、新型コロナウイルス禍においては、管理するマンションの住民に不安を与えないようにする必要があること、本件マンションの住民から、Xがマスクを着用していないことが常態化している旨の連絡(苦情)がなされたことに照らせば、Xを本件マンションから異動させるという判断をすることは首肯できるものである。

そして、Xの年齢に照らせば、配転命令の発令時点において定年までの期間が約6か月しかなく、管理員として継続的な業務を行うことができない状態であったことになるから、ほかのマンションの管理員に配転することができず、清掃員に配転するとの判断をすることも首肯できるものといえる。そうすると、配転命令について、業務上の必要性があったということができる。

また、不当な動機・目的があったことを認めるに足りる証拠もない。

そして、清掃員の具体的な業務内容は専門的な清掃ではなく、日常清掃であり、特殊な器具を用いたり、特殊な技能が必要となるものではなく、日常的な清掃の範囲にとどまり、肉体的負担が大きいものとはいえないこと,転居を要するものではないことなどからすれば、管理員から清掃員への配転が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとはいえない。

以上からすると、確かに、管理員から清掃員に配転されることで、月額賃金が減少することとなることなどから、配転命令が無効となることはあり得るものの、一見して明白に不当であることが明らかであるとはいえない。そうすると、Yによる配転命令が発令されていたと仮定しても、同命令について、不法行為法上、違法な行為であるとまでは評価することができない。 

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月額賃金減少による配転命令無効はあり得る。

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