事業場閉鎖にともなう関西→東京の転勤命令を拒絶し懲戒解雇 有効
******
Xは,G1ビル内での勤務が可能であったから本件配転命令には業務上の必要性がなかった旨主張した。
排斥理由1
平成30年7月当時,Yグループ全体を通じて間接業務の効率化・集約化が図られ,更にこれが継続していた状況にあった → G1ビルに入居するYグループの企業において,他部署ないし他企業から余剰人員を受け入れていく状況にあったということはできない(むしろ減員していく状況にあった) → そうすると,原告のH1への出向を解除したとしても,原告を配置することが可能な部署が被告に出現する状況にあったとはいえない
排斥理由2
Xにおいて企業秩序を維持して就労していこうとする意思や態度を看取することはできないこと と Xが入社以来約16年間もの長期間資格が昇格していないこと と 平成30年度の賞与において人事考課が影響する個人別業績賞与が標準支給額より二,三割低額であったことなど
→ 原告の勤務態度には問題があり,事務処理能力や人事評価も低いものであったというほかない → そうすると,原告を配属することが可能な部署自体が相当限定されることとなる → 他方G1ビルに入居するYグループの企業において経営企画部や人事部などの部門が存在するとしても,人事配置は,適材適所で行う必要がある → 仮に,原告が主張するとおり,G1ビル内に,原告が過去に経験した部門が存在するとしても,直ちに同部門に原告を配属することができるとは解されない
以上からすれば,K1事業部長が,G1ビル内の間接部門への配転が可能な部署があるかについて具体的な検討を行っていないことなどを併せ考慮しても,本件配転命令の業務上の必要性がなかったことになるものでもない。
******
Yは、Xが訴訟で証拠提出したXの長男及び母親に係る診断書や通院状況に関する資料は本件配転命令発出前にはYあるいはH1に提出されていなかったものであり,Xが申告しなかったためYとしては知悉することができなかったものであるから判断事情として考慮すべきではない旨主張した
Xの個人的な事情について,Y又はH1がXの協力を得ることなく調査することができる範囲には自ずから限界がある。他方で,自身に関する個別事情を最もよく把握しているXにおいて,配転命令に応じることが困難な具体的な事情を説明することは基本的に容易であり,かつ相当というべきである
→ Yが,本件配転命令以前に,Xが本件訴訟において提出しているような医師の意見書や診断書等の内容を認識していないのは,XがYから述べる機会を与えられなかった,あるいは上記書類を提出する機会がなかったことによるのではなく,Y又はH1が,Xに対し,玉川事業場への配転に応じることができない理由を聴取する機会を設けようとしたにもかかわらず,Xが自ら説明の機会を放棄したことによるものというほかない。
→ そうすると,Y又はH1が,Xに対して,医師の意見書や診断書の提出を求めるなどの必要な調査を怠ったということはできないのであって,本件配転命令に際し,Y又はH1が医師の意見書・診断書等の原告の長男及び母親の具体的な状態を認識することができなかったのはXが招いた事態であるから,Y又はH1が,本件配転命令を発出した時点において認識していた事情を基に,本件配転命令の有効性を判断することが相当というべきである。
******
YあるいはH1が,本件配転命令の発出の際に認識していた事情としては,
①原告の長男が自家中毒に罹患しており,体調を崩した場合には学校から連絡があり,病院に連れて行く必要があること,
②原告の母親が,介護の必要はないものの高齢であり,月二,三回は体調不良になること
①について
小学校に通学している児童が,授業中や休憩中に体調を崩したとして,保護者が届け出た連絡先に学校から連絡があり,その程度によっては迎えに来ることを求められることは,一般的な出来事であって,特段珍しいことではなく,通常の事情と解される。
②について
母親は高齢ではあるものの,Xの主張を前提としても,介護認定を受けて介護を要するような状態にあるものではなく,また,持病等についても,加齢による一般的なものを超えるものではないから,単身で居住すること,あるいはXと共に転居することが物理的・現実的に不可能と目されるような障害があったということはできない。
母親は高齢であり,慣れ親しんだ環境で生活したいとの思いを抱くこと自体は自然といいうるものであり,その意味において心理的な障害があるということはできる。また,長男についても,転校することとなれば,環境に変化が生じることから心理的な障害があるといい得るところである。
しかし,そのような事情は,転居を伴う配転の場合には通常生じ得る事情である。また,Yにおいては,転居を伴う配転の場合,借上社宅制度や転任費用補助の制度の利用が可能であるところ,Xにおいて,単身赴任をするか,長男と共に転居し,母親が単身で居住することとするか,あるいはXが長男及び母親と共に転居するかについて何ら制限されておらず,自由に選択することができたものである(一般的な転居を伴う配転の場合と同様,原告が家族・親族と協議して検討・判断すべきものである。)。
そして,Xの主張する事情を全て考慮したとしても,現住所地から通院できる医療機関においてのみ受けることのできる特別な治療をうけなければ長男の生命等に重大な結果が生じかねないような特段の事情のない本件においては,本件配転命令につき,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益があるということはできない。
******
仮に資料を前提としても濫用でない
長男の自家中毒について
通院回数(連日の通院を含む。)
平成27年 7回
平成28年 7回
平成29年 12回
平成30年 14回
平成31年1月から本件配転命令が発令された同年3月1日までの間 2回
平均 1か月1回程度
自家中毒はいつ症状が発症するか不明であり,定期的に通院すれば足りるというものでは必ずしもないことからすれば,学校から長男の体調が思わしくない旨の連絡があった際に,原告が急きょ退社して,対応することも想定される
しかし
長男の体調は基本的に点滴治療により改善していること,自家中毒は,一般的には,成長に伴って症状が改善されていくもので,6歳をピークとして2ないし10歳に症状が出るが,思春期頃には治ることが多いとされているところ,長男は,本件配転命令の時点で約11歳であること,原告が提出した医師の意見をみても,転居について,「可能であるなら避けることがのぞましい」,「あくまでも想像の範疇を超えることはできないが,患児にとって心的ストレスとなるようであれば,発作頻度が増加する等の症状悪化につながる可能性は否定できない」,「本人の病状に悪影響を与える恐れがあると考える」などというものにとどまっている。
Xが従事していた職務の内容はスタッフ業務であり,その内容に照らせば,原告が急きょ不在となったとしても,ほかの従業員による代替等によって対応が可能であると解され,原告自身も,翌日に回せる仕事は翌日に回し,急ぎの仕事は同僚に任せるという対応をしていた旨供述している
長男の看病のために有給休暇とFF休暇では休暇の日数が足りず,無給となる欠勤を余儀なくされた年度があったというような事情はうかがわれない
Xも本件配転命令の直近5年に原告が長男の関係で取得した休暇は,有給休暇とFF休暇の範囲内で収まっていることを自認している
→ 本件配転命令に応じたとしてもXや母親あるいは関係者(必ずしも親族に限らない。)において対応可能な範囲のものと解される
******
Xは、懲戒委員会に労働組合の代表者がいないから懲戒解雇無効と主張
懲戒処分をする場合,法令上,懲戒委員会を開催することを義務付けたり,特定の者を構成員にすることを定めているものではない。
また,Yは内規により懲戒処分をする場合懲戒委員会を開催することを定めているものの,労働組合の代表者を懲戒委員会の構成員とすることを義務付けるような規定は存しない。
しかるところ,懲戒権は,使用者が企業の存立・運営に不可欠な企業秩序を定立し,維持する権限を有することによるものであり,懲戒委員会を設定するか否かやその構成をどのようにするかは基本的に就業規則等に定めることにより使用者が自由に決めることができるものである。
そうすると,懲戒委員会の構成に労働組合の代表者が入っていないとしても,そのことをもって,懲戒委員会の構成ないし本件懲戒解雇の手続に瑕疵があったとはいえない。
******
本件懲戒解雇は,Xが本件配転命令に応じなったことを理由とするものである
本件配転命令は有効
そして 被告の就業規則においては業務上必要がある場合には配転を命じることがあること,職務上の指示命令に反して職場の秩序を乱した場合には,懲戒解雇事由に該当するとされている
前記認定したとおりの経過を経て配転命令がなされたにもかかわらず,同命令に応じないという事態を放置することとなれば,企業秩序を維持することができないことは明らか
→ 本件懲戒解雇は,客観的に合理性があり,かつ社会通念上も相当なものといえ,懲戒権の濫用に当たるということはできない
******
0 件のコメント:
コメントを投稿