2023年2月28日火曜日

STyテクニカル工業事件・千葉地判R4.3.3・労経速2499-49

有期契約(1年)での試用期間解雇 → 有効 ※やむを得ない事由を要求しない

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職種 事務

期間の定め あり 1年ごとの契約更新

試用期間 3か月 試用期間満了後に本採用

給与 時給1000円 毎月末締め 翌々月5日払い(銀行が休業の場合は翌営業日)

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被告は、事務を担当していた正社員が65歳になり退職したことから、欠員補充の目的で求人を出し、原告は、これに応募して被告に入社した。

応募に際し提出された原告の履歴書には、三級ファイナンシャルプラン技能士等の資格を取得し、宅地建物取引士試験にも合格していること、事務経験が3年ほどあり、電話応対、契約書類の作成、請求書の作成等をしていたこと等が記載されていた。また、職歴として、平成16年6月から平成29年10月までの稼働歴(アルバイトを含む。)が記載されていた。なお、前職(a社)での稼働歴は記載されていなかった。

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原告は、10月15日から12月25日まで、原則として月曜日、水曜日、金曜日の9時から16時まで、土曜日の9時から15時まで、被告の事務所でパート事務員として稼働した。火曜日又は木曜日に勤務したのは、10月15日、同月17日、11月5日及び11月21日の4日のみであり、12月は、月曜日、水曜日、金曜日のみの稼働であった(乙1)。

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原告の前任者は、見積書の転記、領収書のファイル、作業員名簿や安全書類の作成、請求書に関する準備書類と請求書の本証の作成等を担当していた。B〔原告の上司〕は、原告の稼働開始に当たり、まずは見積書の転記及び領収書のファイルを行わせることとし、原告が作成した書類をBが確認して、ミスをその都度指摘し、次回の改善につなげるよう指導することとした(証人B、乙9)。

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原告は、Bが見直しや訂正を指示した後も、作成日付や数量の誤り、工種の転記の一部脱落等を訂正していない状態で、見積書をBに提出することがあった。原告は、入社1か月後(11月20日)の時点で、数量や書式の誤り、修正漏れのほか、被告の名称及び住所を記載すべき欄に「甲川定価 15.300円」「千葉 定価」「TEL定価 3,500円」等と記載された状態の見積書を、見直した後の完成物としてBに提出した(原告本人〔22〕、乙4の1〔1、5、8〕、乙4の2)。

原告は、Bから領収書を渡される都度、交通費の小口精算帳簿に入力し、月に数回印刷してBに提出していたが、その際、実際と異なる現場名を記載したまま(「北浦和」「国分寺西」「東品川」等を「虎ノ門」、「立飛」を「ふじみ野」、「レイクタウン」を「人形町」、「日野」を「旭丘」、「目黒」を「碑文谷」等多数。10月ないし12月)、あるいは依頼元の企業名の記載を落としたまま(10月及び11月)提出することがあった(原告本人〔32、33〕、乙3)。

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Bは、当初、原告が仕事に慣れていないためにミスが出ているものと考え、指導箇所を後から見直せるよう、赤字で訂正を入れ、その理由を口頭で説明したり、事務室内にあるホワイトボード(社員の外出予定が現場名と共に記載されている。)の写真を撮って印刷し、一つ一つチェックを入れつつ小口精算帳簿に入力するよう指導したりしていたが、原告は、上記のとおり、入社後1か月を経ても同じような入力ミスを繰り返し、Bから訂正を指示されても1回で反映させることができない状態が続いた。

被告代表者とBは、12月頃から、原告に書類の作成業務を任せることはできないと考えるようになった(証人B〔2ないし5〕、乙9)。

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Bは、11月下旬ころ、被告代表者に対し、原告とはこれ以上一緒に仕事をするのは難しい等と伝えた。被告代表者も、12月初旬には本採用は難しいと感じていたが、試用期間いっぱいの様子を見た上で判断しようと考え、Bにもその旨を伝えた(証人B〔7〕、被告代表者本人〔2、7〕)。

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原告は、単純な書類作成にもミスを頻発させ、Bによる指導や訂正指示にも拘わらず、同様のミスを繰り返していたことが認められる原告が、一見して明らかなミスや、(Bに尋ねたり、事務室内のホワイトボードの記載を直接見たりすることによって)容易に防ぎ得るミスも放置したまま、Bに書類を提出していること(認定事実(2)ア(イ)、(ウ))からすれば、原告が、一般に特別な能力を必要としない事務員として採用されていることを考慮しても、その作業能率は明らかに不良である(就業規則第29条1項⑤)といえる。

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上記の原告の作業能率の不良は、採用決定の時点で知ることが期待できない事実であるところ、原告が、ミスの原因としてBの指示や配慮の不足を挙げるなど、自身の注意不足を省みたり、Bにかかる負荷を考えたりする姿勢に乏しいこと(原告本人〔2ないし6〕)、Bは、自らの仕事に加え、原告がしなかった原告の前任者の担当業務を引き受けていたこと(同(2)ウ)等も併せ鑑みれば、原告の作業能率の不良は、これを前提とすれば、欠員補充を目的としていた本件労働契約が締結されることはなかった事情であるといえる。本件解雇は、原告が原告の夫の請求に関与したことを契機に時期が早められたものと推認されるが(認定事実(2)イ(エ))、原告の作業能率の不良の程度及びそれに対する姿勢に鑑みれば、残りの試用期間を勤務しても要求水準に達することが困難であったといえるから、本件解雇は、就業規則29条1項⑤に規定する解雇事由があり、留保解約権の趣旨及び目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会的に見て相当であるというべきである。

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