2023年2月28日火曜日

甲社事件・千葉地判R4.3.29・労経速2502-3

職場環境調整義務違反を認め慰謝料80万円認容 → 調整のためには周りに原告の症状を知らせる必要があるが、それは許されるのか?まずは原告に、周りに話しても良いかを尋ねるべきではないか?それとも安全配慮義務の履行という面からは義務として同意なくしても実施すべきということか?

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原告は,本件出来事に関連して,●●●SV,●●●SV,●●●SVにより,一連のパワハラを受け,うつ症状を発症し,増悪した上,●●●,●●●UM,●●●SV,●●●,●●●,●●●を始めとする他の出演者により,出演者間の「カースト」に基づいた職場における常習的ないじめの一環としてのいじめを受けて,著しい精神的苦痛を受けたと主張するところ,

●●●SVの発言について,本件出来事の後,セキュリティ部のオフィスで行われた原告との面談において,●●●SVの側から,労災申請への協力を求める原告の心の弱さを指摘するものともとれる発言があったという限度において認めることができることは,上記2(2)のとおりである

が,

●●●SVの発言,●●●SVの発言については,これを認めるに足りる的確な証拠がなく,認めることができない。

●●●SVの発言についても,社会通念上相当性を欠き違法となるとまでいうことはできない。

●●●の発言,●●●UMの発言,●●●SVの発言,●●●の発言,●●●の発言,●●●の発言についても,それらの発言がされたことを認めるに足りる的確な証拠がなく,一部認めることができる発言等(上記2(5)の●●●UMの発言,●●●の平成29年11月22日の発言)についても,それが社会通念上相当性を欠き違法となるとまでいうことはできない。

もっとも,

原告は,これらのパワハラ及び職場における常習的ないじめがあったことを前提として,被告が,原告の仕事内容を調整する義務に違反し,職場環境を調整する義務に違反したと主張するものである。

そして,原告の仕事内容を調整する義務の違反については,

(1) 原告は,本件出来事の後,うつ症状が発症し,過呼吸の症状が出るようになったが,来期の契約締結の可否に影響を与えることを慮り,できる限り人に知られないようにしていたこと,

(2) ●●●医師ら及びハートクリニック●●●の医師は,休職の上,療養に専念することを勧めたが,原告は,出演者雇用契約の継続にこだわり,出演者としての就労を継続しながら治療を受けることを望んでいたこと,

(3) 被告は,原告が出演者としての就労を継続することを前提として,なるべくゲストに接することがないように配慮したポジションである本件配役を配役したものであること

からすると,被告が原告の仕事内容を調整する義務に違反したとまでいうことはできない

が,

職場環境を調整する義務の違反については,

(4) 原告は,過呼吸の症状が出るようになったことから,配役について希望を述べることが多くなったところ,過呼吸の症状が出るようになったことを原告ができる限り人に知られないようにしていたこともあり,他の出演者の中には,原告に対する不満を有するものが増えたのであって,原告は職場において孤立していたと認めることができるところ,

(5) 出演者間の人間関係は,来期の契約や員数に限りがある配役をめぐる軋轢を生じやすい性質があると考えられること,

(6) 原告は,本件出来事の後,うつ症状が発症し,過呼吸の症状が出るようになった後も,来期の契約締結の可否に影響を与えることを慮り,できる限り人に知られないようにしていたが,原告の状況は,遅くとも平成25年11月28日及び12月18日の面談により,●●●部長,●●●MGRの知るところとなったこと

によれば,

被告は,他の出演者に事情を説明するなどして職場の人間関係を調整し,原告が配役について希望を述べることで職場において孤立することがないようにすべき義務を負っていたということができる。

ところが,

被告は,この義務に違反し,職場環境を調整することがないまま放置し,それによって,原告は,周囲の厳しい目にさらされ,著しい精神的苦痛を被ったと認めることができる

から,

被告は,これによって原告に生じた損害を賠償する義務を負う。

原告は,被告の職場環境を調整する義務の違反によって,著しい精神的苦痛を受けたと認めることができるところ,この苦痛に対する慰謝料は80万円とするのが相当である。

原告は,報酬を支払うことを約して本件訴えの提起及び追行を原告代理人に委任したと認めることができるところ,その報酬のうち被告の職場環境を調整する義務の違反と相当因果関係があるのは8万円と認めるのが相当である。


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