2023年2月28日火曜日

シティグループ証券事件・東京地判R4.5.17・労経速2500-29

 中途採用者の試用期間解雇 → 有効

*******

被告の就業規則が解雇の事由として「試用期間中の者について、社員として不適格と認められたとき」を定めていること、本件雇用契約が3か月間の試用期間を定めていること、本件解雇が当該試用期間の満了直前に上記就業規則の規定を根拠としてなされたこと(前提事実(3)、(4)、(7)、(8))に照らすと、本件雇用契約における試用期間の定めは契約の解約権を留保したものであって、本件解雇は当該留保解約権の行使としてなされたものと認められる。

そして、かかる解約権の行使としての解雇であったとしても、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、当該解約権を濫用したものとして無効と解されるが、通常の解雇よりも広い場合において許容されると解するのが相当である(最高裁判所昭和48年12月12日大法廷判決・民集27巻11号1536頁参照)。

*******
原告は、本件雇用契約に基づく勤務を開始して日が浅く、職場の実情等を十分把握しているとは到底認められない中で、

沖縄拠点のアセットサービス課長として協働すべき立場にある東京拠点のアセットサービス課長であるE課長について、「●」などとアセットサービス課長としての適格性を頭から否定する内容のメールを、両者の上司であるB部長に送信し(認定事実(2))、

他部署の職員について、「●」などとその能力等を否定的に評価する内容のメールをアセットサービス課の職員全員が受信する態様で送信したり、

「●」などと非難する内容のメールを多数の職員が受信する態様で送信したりした(認定事実(6)ウ)ばかりでなく、

取引先の担当者に対し、「●」などと通常の受け手をして高圧的との印象を抱かせるメールを送信した(認定事実(4))。
*******
また、原告は、本件雇用契約に基づく勤務を開始して日が浅く、b社における運用等が定まった背景や経緯などを十分把握しているとは到底認められない中で、

「●」などとb社における運用等に問題がある旨を強い口調(筆致)で主張し、周囲の職員が経緯や現状などを説明しても(認定事実(3)イ、(6)イ、(7)イ)、自らの主張を繰り返すばかりでb社における運用等が定まった背景や経緯などを把握することに意を尽くさなかった(認定事実(3)ウ、(6)ウ、(7)ウ)。
*******
このような原告の言動に対し、周囲の職員が困惑・反感を示したため(認定事実(3)エ、(8)、(9))、原告の上司であるB部長は、原告に対し、受け手に配慮したコミュニケーションが必要であることを繰り返し指導した

が(認定事実(8)、(10)イ・エ・カ)、

原告は、自らの主張が正しいことをいうばかりで上記指導に耳を貸そうとしなかった(認定事実(10)ウ、オ、キ、(12))。

また、原告は、顧客との契約に当たる証券サービス本部と連携することなく、単独で取引先と打合せを行い、一方的に「昨日、当行は、本邦初の『株主総会の電子化』に向けて、株式会社fと共に、着手することになりました。」などと表明して、証券サービス本部等の不信感を強めている(認定事実(14)、別紙1番号15)

*******
以上のような経過から、原告の上司や人事担当者は、原告の沖縄拠点のアセットサービス課長としての適格性に疑問を持ち、沖縄拠点への赴任を保留して、本件人事面談において改善を求めた(認定事実(11)、(15)、(16)、(18)、(20))。

それでも、原告は、「●」とのメールを送信して従前の主張を繰り返した(認定事実(17)、別紙1番号18)。

また、原告と周囲の職員との信頼関係が改善することはなく(認定事実(21)イ、別紙1番号27・28)、むしろ上司であるB部長との信頼関係が損なわれていった(認定事実(19)ウ、別紙1番号24)。

*******
以上によれば、

原告には、他者を理解することに意を用いることなく、また相手方の受け止め方を配慮することなく、自らの見解を一方的に主張する性向が認められ

かかる性向は、本件訴訟の原告本人尋問における原告の発言状況〔反訳書9頁等〕にも表れているというべきである。)、

上司の指導によってもその性向は改まらなかったものであって、

沖縄拠点のみならず東京拠点の関連部署と連携を図りつつ部下職員の指導・監督に当たるべき管理職として資質を欠くものというほかない。

そして、被告においてかかる原告の性向を採用前に認識することは困難であったといえるから、

本件解雇は、本件雇用契約の留保解約権の行使として客観的に合理性を欠き、社会通念上相当と認められない場合に当たるとはいえず、有効であると認められる。
*******
<以下、原告の主張を採用しない、とする部分>

原告は、被告は人事面談1がなされた9月25日の時点で原告の解雇を事実上決めており、本件解雇は実質的に試用期間中途の解雇であって、試用期間満了時の解雇と比してより高度の合理性・相当性が求められる旨を主張するが、被告が人事面談1の時点で原告の解雇を事実上決めていたことを認めるに足りる証拠はない。

原告は、本件雇用契約における賃金は年額850万円にとどまる上、原告の職務も実質的には管理職ではなく、本件解雇について被告の裁量を広く認めるべき事情はない旨を主張するが、前提事実(2)・(3)及び証拠(甲1、乙1、23)によれば、被告はもともと沖縄拠点のアセットサービス課において勤務する管理職でない職員を募集していたのに対し、原告の職歴に注目して管理職たる課長として採用したものであり、部下職員4名の指導・監督に当たるべき管理職の職務を担っていたことは明らかである。

原告は、(2)アからウまでで指摘した原告の言動がいずれも業務上必要なやり取りにとどまる旨を主張するが、当該言動が一般的な受け手をして困惑・反発させるに足りるものであることは明らかであり、その認識を欠くこと自体、原告のコミュニケーションにおける問題であるというほかない。原告本人は、メールで記載した事項について口頭で補足して説明していた旨を供述するが(反訳書50頁等)、(1)で説示したとおり他の職員から原告に対する困惑の声が上がっていたことからすれば、仮にかかる説明をしていたとしても、それが功を奏していなかったものというべきであって、原告のコミュニケーションに問題があったことを左右するものではない。

なお、原告は、b社の税務処理について繰り返し指摘していたことについて、税務上違法な処理がなされていた疑いが濃厚であったにもかかわらず被告が原告の問題提起に対し適正な回答をせずにいたため、管理職としての責任から指摘を続けた旨を主張する。しかし、(2)イで説示したとおり、原告は自らの見解を強い筆致で主張し(認定事実(10)ア、別紙1番号8)、問題点を整理するよう指示を受けても、税務部に追及的な質問のメールを送り付けるのみで(認定事実(12)、別紙1番号14①)、実情や問題点の把握に意を用いる態度を示さなかったのであって、仮にb社の当該税務処理が適切でなかったとしても(当裁判所がかかる認定をするものではない。)やはり原告のコミュニケーションに問題があったことを左右するものではない。
*******

0 件のコメント:

コメントを投稿