2023年2月10日金曜日

遺族補償給付等不支給処分取消請求事件・東京地判R4.5.30・労経速2499-49

増悪の場合には特別な出来事が必要

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原告は、①本件認定基準のみならず、その前提となった委託研究やその他の医学的知見を総合的に踏まえた上で、業務と自殺との相当因果関係の有無を判断すべきであること、②精神障害発病後に職場の心理的負荷を受けた場合に症状が増悪することは明らかであり、業務による心理的負荷はうつ病エピソードの症状を悪化させ、うつ病エピソードの症状の悪化は、自殺の危険性を増加させるものであるから、精神障害を発病しており平均的労働者の範疇に属さない労働者であったとしても、平均的労働者でも精神障害を発病するような強い心理的負荷を受けた場合には、その後の悪化について業務起因性が肯定されるべきであることを指摘した上で、健常者でも精神障害を発病するような心理的負荷の強度が「強」に該当する業務上の出来事が認められる場合であっても、「特別な出来事」がなければ、精神障害の悪化について一律に業務起因性を否定することは相当でない旨主張する。

しかし、既に発病した精神障害が悪化した場合には,心理的負荷が「強」に該当する業務上の出来事が認められたとしても、直ちにそれが精神障害の悪化の原因であると判断することは医学上困難であること(上記(3)②③)からすると,既に発病した精神障害の悪化についての業務起因性を肯定するためには「特別な出来事」を要するとする考え方が不合理であるとはいえない

また,専門検討会報告書は,法学及び医学の専門家による議論を経て専門検討会が取りまとめたものであり(前記前提事実(6)ア),議論の過程において、精神障害の悪化について業務起因性を肯定するためには「特別な出来事」の存在を要求せず、心理的負荷の強度が別表1の「強」に相当する程度の出来事があれば足りるとする意見があったことを理由として,専門検討会の最終的な結論に基づき策定された本件認定基準が不当であるということはできない。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。

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