業務外精神障害が相当程度安定していた後の増悪につき、必ずしも特別な出来事を求めない
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[増悪には特別な出来事が必要とするのが基準]
かかる判断基準は,ストレス―脆弱性理論の考え方と整合的であり,行政処分の迅速かつ画一的な処理という認定基準の趣旨からしても一定程度の合理性を有するものといえる。しかし,認定基準に裁判所の判断が拘束されるものではないことは上述のとおりであり,専門検討会報告書上も,精神障害で長期間にわたり通院を継続している者<ママ>の,症状がなく(寛解状態にあり),または安定していた状態で,通常の勤務を行っていた者の事案については,「発病後の悪化」の問題としてではなく,治ゆ(症状固定)後の新たな発病として判断すべきものが少なくないことや,発病時期の特定が難しい事案について,些細な言動の変化をとらえて発病していたと判断し,それを理由にその後の出来事を発病後のものと捉えることは適当でない場合があることに留意する必要があるとされており,そもそも当該事案が「発病後の悪化」であるかの特定自体に一定程度の困難が伴うことがうかがわれ,かかる事情如何によって判断基準が大きく異なるのは,業務を要因とする労働者の疾病等に対して公正な保護を実現するという労災保険法の趣旨(同法1条)に悖るというべきであるから,裁判所としては,上記の専門検討会報告書の考え方を踏まえた上で,当該労働者の具体的な病状の推移や具体的な出来事の内容等を総合考慮し,相当因果関係の認定を行えば足りるものと解される。
したがって,一旦業務外の要因によって精神障害を発病したと認められる労働者がその後精神障害を発病ないし悪化した事案の相当因果関係判断についても,後者の発病ないし悪化の時点で前者の発病が寛解に至っていたか否かで形式的に異なった基準を適用するのではなく,発病ないし悪化時点での当該労働者の具体的な病状の推移,個別具体的な出来事の内容等を総合考慮した上で,業務による心理的負荷が,平均的労働者を基準として,社会通念上客観的にみて,精神障害を発病させる程度に強度であるといえ,業務に内在する危険が現実化したと認められる場合には,当該発病ないし悪化についても業務との相当因果関係を認めて差し支えないものと解される。
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