2023年2月6日月曜日

MARUWA事件・名古屋地判R4.8.26・ジャーナル130-30

民事労災損賠請求(解離性大動脈瘤を原因とする急性心筋梗塞により死亡) 認容 

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出張のうち東京やβのMQ社への出張のように長時間の移動がある場合には、移動時間も業務によって拘束されているというべきであるから,移動を開始した時刻を始業時刻、移動が終了した時刻を終業時刻とすることとするが、移動は公共交通機関を利用して行われており、移動中に何らかの業務に従事しなければならなかったという事情を認めることはできず、移動中は時間を自由に利用することが保障されていたといえるから、移動時間は労働時間に含めず、休憩時間とすることとする。

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亡P5の発症前の時間外労働時間は、発症前1か月が69時間59分で、発症前2か月間から6か月間の1か月当たりの時間外労働時間も最大で発症前2か月間の75時間32分であり、認定基準の〔2〕の水準には至らないが、移動時間を労働時間に計上していない出張を毎月数日間連続で繰り返しており、その期間も少なくとも発症前1年間は続いて疲労を蓄積させていたことからすれば、亡P5の死亡と業務との間に因果関係を認めるのが相当である。

この点、被告は、亡P5が健康診断において軽度の血液脂質異常と高血圧を指摘されていること、亡P5に喫煙の習慣があったことを主張するが、血液脂質異常も高血圧も軽度のものであり、喫煙の習慣を含めて、これらが亡P5の解離性大動脈瘤の発症の要因となったと認めるに足りる証拠はないから、前記認定は左右されない。

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亡P5は、総務室長として総務室が担当する総務業務を行っており、MQ社の経理業務の応援も被告の指示命令によって行っていたと認めることができる。また、認定事実(1)によれば、亡P5は、管理本部の他の部署と一緒に本社1階フロアで勤務し、被告代表取締役の席とも近接していたのであるから、被告代表取締役及び亡P5の上司に当たる管理本部長らは、亡P5が長時間勤務を行い、毎月数日間連続して出張を繰り返していたことを認識していたと認めることができる。

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被告は、〔1〕亡P5は、総務室長として総務室を統括する立場にあったから、自らを含めた総務室に所属する者の勤務状況などを被告代表取締役に申告するなどして業務軽減のための措置をとる職責があり、自らの業務が過重になっていたのであれば、部下に対し業務を任せることも可能であった、〔2〕亡P5は、健康診断において軽度の血液脂質異常を指摘され精密検査を受けるように、平成25年の健康診断では胃腫瘍が疑われ胃内視鏡検査を受けるようにそれぞれ指導がなされ、死亡する47日前には胸を押さえるしぐさをして兄から病院に行くように言われていたにもかかわらず、一度も病院で検査を受けることはなく、喫煙、運動、食生活等の生活習慣の見直しもしなかったことから、亡P5に過失があったと主張する。

 しかしながら、使用者は、雇用する労働者に対し、従事する業務を定めることができ、労働者は、使用者から定められた業務を軽減するように求めることが容易ではないといえるから、労働者が自ら関わる業務について業務が過重になっていた場合に申告することが業務上義務付けられていたとか、使用者に対し、自らが関わる業務量について誤った認識を与えたといった事情がない限り、使用者に対し業務軽減を求めなかったことについて、労働者に過失があったと認めるのは相当とはいえない。本件において、総務室長であった亡P5は、総務室の勤務状況を把握すべき立場にあったといえるが、使用者や上司である被告代表取締役や管理本部長に対し、過重業務になっていた場合に業務の軽減を求めることを業務上義務付けられていたと認めることはできない。また、部下を含む他の従業員もそれぞれ担当業務があることから、無条件に部下に仕事を割り振ることはできないのであり、本件において、亡P5が部下に対し自らの業務を任せ、業務を軽減させることができたことを認めるに足りる証拠はないから、亡P5が部下に対し業務を任せなかったからといって、亡P5に過失があったということはできない

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証拠(甲8・5、55頁)及び弁論の全趣旨によれば、亡P5は、死亡時、原告P1及び原告P3と同居し生計を同一にして、一家の支柱として経済的に家族を支えていたと認められる。被告は、亡P5に対し、長時間勤務に加え、長期間にわたる連続した出張を繰り返させ、過重労働をさせていたにもかかわらず、本件においては、閑職にあって、誰からも注意や指示をされることなく自由きままな社内生活を送っていたなど、亡P5の名誉を害し、原告ら遺族の心情を逆撫でする主張を繰り返している
 以上のような事情を踏まえると、慰謝料は3000万円とするのが相当である。
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