失敗した独立競業への協力による懲戒解雇 無効
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懲戒解雇の効力について → 無効
(ア)就業規則116条との関係について
前記のとおり、X1の行為は、就業規則119条24号に該当することが認められるにとどまる。
就業規則116条は、服務規律違反について、1項で、適切な指導及び注意を行い、改善を求める旨規定し、2項で、1項にもかかわらず、改善が行われず、企業秩序維持のため必要があるときに、懲戒処分を行う旨規定するが、上記X1の行為について、本件懲戒解雇前に、Yが指導又は注意をした形跡は認められない。
(イ)懲戒処分の相当性について
Yは、就業規則116条2項について、当該服務規律違反行為の態様、性質上、指導又は注意による改善等の余地がないような場合に、これを経ずに、懲戒処分をすることが許容されるとの解釈の下、就業規則119条24号も適用して、本件懲戒解雇をしたものとも考えられるが、その是非はさておき、次のとおり、X1について、本件懲戒解雇をしたことは、懲戒権を濫用したものとして、労働契約法15条により無効であると認められる。
P5による競業会社の設立及び新会社へのY従業員の転職の勧誘は、本件Xらを含め、Yの住友電装及びNTC関連業務と競合する事業を立ち上げるのに必要な人員を確保して、新会社で事業を行うことを企図したものであり、これが実現すれば、Yの事業に一定の不利益を与えるものであったということができる。
もっとも、P5の上記計画は実現しておらず、P5が働きかけた神奈川事業所の管理者・役職者の中で、ある程度、具体的に協力したのはX1にとどまり、その実現可能性は、さほど高いものであったとは認められない。X1は、同計画が具体化する当初から、P5から相談を受け、随時、協議を重ねてきたものであるが、前記認定の経過から、終始、従属的な立場にあったことは明らかであり、Y従業員への具体的な働きかけは、等級面談の際に意向を確認したことが認められるにとどまり、これにより、上記計画の実現に向けた具体的な成果に結び付いたことや、Yの職場規律、社内秩序及び職場環境に具体的な影響が生じたことは認められない。また、Yは、P5の退職直後に、P5に貸与していたメールアドレスの調査を端緒として、上記計画について把握したところ、これに基づき、関係者に事情を聴取し、業務上の指示等をするなど適切な措置を講じることにより、P5による上記計画の実現を防止することが困難である程度に、同計画が進展していたとは認められない。
これらの諸事情に加え、X1に懲戒処分歴がないことや、P5が退職届を提出した頃まで、新会社設立を企図していることを認識していたP6常務が平取締役となったにとどまり、1月30日会議で新会社設立構想の説明を受けたP9部長が注意処分を受けたにとどまることとの均衡も考慮すると、上記非違行為について、上記諸事情を情状として適切に考慮せずに、就業規則119条に基づき解雇したことは、社会通念上相当であるということはできず,懲戒権を濫用したものと認められる。
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名誉棄損について → 肯定
ア 名誉棄損該当性・違法性
前提事実、前記認定事実のとおり、Yが本件各懲戒処分について公表したことは、Xらの社会的評価を低下させるものであり、名誉棄損に該当すると認められる。
Yは、前記のとおり、懲戒処分運用規程12条に基づく社内への公表や、取引先への説明としてしたものであり、違法性がない旨主張するが、前記のとおり、本件懲戒解雇及び本件降格処分は懲戒権を濫用したものとして無効であり、本件諭旨解雇は懲戒事由に該当するとは認められず無効であるから、Y主張の根拠を欠き、上記名誉棄損について、違法性は阻却されない。
イ 損害
(ア)慰謝料
前記認定事実によれば、Xらは、本件各懲戒処分の公表により精神的苦痛を受けたと認められるところ、その慰謝料額は、上記と同様、本件各懲戒処分の公表内容や懲戒事由・服務規律違反の存在等の諸事情を総合考慮して、X3につき50万円、X1及び同P2につき各30万円と認めるのが相当である。
(イ)弁護士費用
上記慰謝料額に鑑み、X3につき5万円、X1及び同P2につき各3万円と認めるのが相当である。
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