タイムカードの文書提出命令 認容
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第4 当裁判所の判断
1 一件記録によれば、相手方の従業員に関する出退勤時刻は、サイボウズというソフトウェアを使用したタイムカードにより行われており、2019年2月1日から2020年6月15日までのタイムカードの出退勤時刻の記録については、従業員であった申立人が自らサイボウズから印刷したものを提出していること、2020年6月頃に労働基準監督署が介入したことを契機として、サイボウズ内のタイムカードがロックされたうえ、業務用PCの持ち出しが禁止されてしまい、申立人は、2020年6月16日以降2020年7月31日(申立人の退職日)までのタイムカードが入手できず、本件訴訟に証拠として提出できていないことが認められる。
上記事実によれば、申立人が提出を求めている本件文書(該当期間のタイムカード)については、当然、相手方が管理し、所持しているものと認めるべきである。
2 上記の点に関し、相手方は、申立人が提出を求めている本件文書(該当期間のタイムカード)については、現在、保有又は保管(所持)していない旨主張している。しかし、タイムカードについては、「労働関係に関する重要な書類」として、使用者が5年間(完結の日が起算点)記録保存の義務を負っているもので(2020年法律第13号改正により、従前の3年間が5年間と改正された。)、しかも、違反した場合は罰金の罰則もあり、また、電子データであるので、保管するために場所をとったり、紛失したりするようなこともなく(上記データをあえて削除しているとすれば、相手方が自ら不利になることを避けるために行っているとしか考えられない。)、相手方が現在所持していないとは考え難い。
3 相手方は、2020年6月16日から2020年7月31日(申立人の退職日)までの期間の出退勤管理については、それまでと同様、業務日報メール全てを乙12号証の1ないし28として証拠提出し、上記期間の未払賃金につき、多く見積もっても19万1263円程度であると主張している。
しかし、申立人は、業務日報を送信した時刻が現実に業務が終了した時刻ではないと主張しており、本件訴訟では、申立人は、タイムカードの出退勤時刻を基準として時間外労働時間を計算すべきで、多くの裁判例でも同様であると主張し(申立人の2021年6月15日付け準備書面)、相手方が提出する業務日報メールの提出で必要性が充たされるとか、公平であるとはいえない。
4 以上から、相手方は、本件文書(該当期間のタイムカード)を所持していると認めるべきで、民事訴訟法220条4号(同号の除外事由がない文書)により、文書提出義務を負っていると認められる。
したがって、申立人の本件申立ては理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり決定する。
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抗告審
3 当審における抗告人の主張に対する判断
抗告人は、
(1)従業員の勤怠管理は業務日報メールで行っており、相手方主張の従業員にサイボウズのタイムカード機能への入力を命じたこともなく、それにより賃金計算をしたこともない、同機能は出退勤しなくとも記録を行うことが可能であり、自動入力された時間を変更することができるなど内容の信用性にも限界がある、また、抗告人がサイボウズ社に問い合わせをしたが抗告人のタイムカードの情報は残されていないと回答を受け、相手方からの情報も得られずタイムカードの情報を取得できなかった、
(2)基本事件においては業務日報が提出されており、仮に相手方主張のタイムカードがあったとしても、上記のような信用性の高いとはいえないものを取り調べる必要はない、
と主張する。
しかしながら、
(1)については抗告人において、上記のタイムカード機能を使用していたことが認められ、そうであれば、導入した抗告人においてタイムカードのデータを保持しているというべきであって、利用契約の契約者である抗告人においてサイボウズ社から入手して提出すること可能であると考えられる。なお、タイムカードの信用性などは文書の所持、保有の事実を左右する事情ではない。
(2)についても、タイムカードの信用性は審理の中で判断されるものであり、受訴裁判所においても必要性があるとしているのであるから、抗告人の主張では本件のタイムカードの取調べの必要性がないとはいえないのであり、抗告人の主張は採用できない。
4 よって、本件抗告は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。
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