2023年4月5日水曜日

スルガ銀行事件・東京地判R4.6.23・ジャーナル131-38

 異動命令は懲戒処分か人事命令か → 人事命令

※ Xは、本件異動命令が懲戒処分であることを前提として、権利の濫用に当たり、無効である旨を主張していたが、この判断により、前提で否定された

※ 懲戒解雇は無効とされた(定年により地位確認請求は棄却)

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2 争点1(本件異動命令は、懲戒処分に該当するか。)について

(1)人事権の行使としての異動命令と、企業秩序の違反に対する懲戒権の行使である懲戒処分とは、本質的に異なるものであるところ、

Yは、本件異動命令をした際には、これを人事異動として社内掲示板に掲載し、本件懲戒解雇時と異なり、Xに対する弁明の機会の付与や懲戒処分通知書の交付といった手続を行っていないこと、

「経営企画部詰審議役」への異動は、別紙記載1の組織規程25条、別紙記載4の本件協定5条に基づき、Yが人事権の行使として決定し得る範囲のものであること

を考慮すると、本件異動命令は人事権の行使として行われたものと認めるのが相当である。

(2)これに対し、Xは、ある措置の性質が人事権の行使と懲戒処分のいずれであるかは、使用者の主観的な意図にかかわらず、企業秩序違反行為に対する制裁罰という性格を有するものであるか否かを客観的に判断すべきであるとし、本件異動命令は、人事権行使の業務上の必要性がないこと、Xに対する制裁目的があること、人事権行使の結果として許容し得る程度を著しく超える不利益を負わせるものであることから、懲戒権の行使としての降格処分に該当する旨を主張する。

しかしながら、人事権の行使と懲戒処分とは、その根拠も有効要件も異なるものであり、使用者はその相違を踏まえた上で人事権の行使又は懲戒処分として当該措置を執っていることを考慮すると、当該措置が人事権の行使と懲戒処分のいずれであるかを使用者の主観的意図と無関係に判断することが相当とはいえない

そして、本件異動命令が行われた当時は、スマートライフの支払停止が発生し、スマートライフ(又はその関連会社であるイノベーターズ)から家賃の支払を受けられない債務者(顧客)がYに対する返済に窮し、シェアハウスローンが回収困難となるおそれが顕在化したことから、危機管理委員会による事実関係の調査が開始され、いずれ金融庁の検査が行われることも予想される事態となっていたことを考慮すると、Yが、上記調査や検査に適切に対応するために、シェアハウスローンに関与してきた営業部門のトップの地位にあったXをそのままその地位に置いておくことはできないと判断したことが合理性を欠くとはいえず、本件異動命令について業務上の必要性がないとはいえない

仮に、Yが本件異動命令を行うに当たり、Xに対する制裁目的があったとすれば、Yが懲戒処分を意図したことを基礎づける事情にはなり得る。しかし、Xが、q4会長から「シェアハウスの一連の問題があったので降りてもらう。」と告げられたとする点は、X本人の陳述書によっても、執行役員の辞任についての発言である上、Yにおいては、この頃、危機管理委員会を設置して事実関係の調査を開始したばかりであったのであるから、Xに「一連の問題」の責任を取らせるには時期尚早であるともいえ、q4会長の上記発言をもって本件異動命令に制裁目的があったと認めることはできない。また、q8人事部長が金融庁からのヒアリングへの対応のためXに対して退職願の撤回を求めた事実は、本件異動命令の制裁目的を推認させるものではない。

確かに、本件異動命令に伴い、Xの給与は大幅に減額されているが、これは、執行役員を辞任したXが、その時点で55歳を超えていたことから、先任社員となり(別紙記載4の本件協定3条)、先任社員の職務区分及び職位に応じた給与額が決定されたこと(別紙記載4の本件協定6条)によるものであることが認められ(乙98、証人q8・8~10頁)、懲戒処分によるものではない

以上によれば、Xの上記主張は採用することができない。


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