2023年1月11日水曜日

ヨツバ117事件・大阪地判R4.7.8・ジャーナル129-36

事業場外労働みなし制度の適用否定

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本件についてみると、

原告が時間外労働を行ったと主張している22か月のうち20か月についてはタイムカードが存在すること

被告の就業規則では、始業及び終業時にタイムカードの打刻が義務付けられていること

被告の従業員服務規程でも外回りから戻ってきた際にタイムカードの打刻が義務付けられていること

被告の事務所にも「帰って来たら必ずタイムカード押して下さい」との掲示がなされており、タイムカードの打刻が求められていること

などからすれば、被告ではタイムカードの打刻が義務付けられており、原告は、タイムカードが残存する月以外の月についてもタイムカードを打刻していたことがうかがわれる。

そして、

タイムカードは打刻した時刻を客観的に記録するものであること

原告のタイムカードをみると、一部手書きの時刻もあるものの、おおむね出勤時刻及び退勤時刻が打刻されていること(甲4の1~20)

からすれば、

被告とすれば、原告のタイムカードの打刻内容を確認することで、原告の労働時間を把握することが容易に可能であったということができる。

また、ポイント加減一覧表の記載内容に照らせば、被告では1日3回の売上報告を行うことが義務付けられていたことがうかがわれるところ(なお、報告が義務付けられていたかの点をさておくとしても、1日3回の電話による売上報告が行われていたこと自体は被告も自認している。)、被告は、同報告により営業担当の従業員がどのような活動を行っているか把握することができ仮に、報告内容に疑問を抱いたり、詳しい内容を知りたいのであれば、報告の際やあるいは翌日朝に事務所に出社した際に追加の報告を求めることも可能であったといえる。

そして、

原告を含む営業担当の従業員は毎日業務日報を提出していたこと

からすれば、同業務日報の内容を踏まえて、報告内容を検討することも可能であったといえる。

なお、被告の主張を前提としても、1日3回の報告のうち最後の報告は終業時になされていたことになるから、被告は従業員の終業時刻を把握することも可能であったことになる。

さらに、原告の業務内容が消火器の販売・交換というものであることからすれば、訪問件数や訪問先所在地などを確認すれば、どの程度の時間を要するかについて、ある程度把握することも可能であったといえる。

被告の反論と裁判所による否定

〔2〕売上報告は義務付けていない → 被告は、報告がなされなくてもペナルティを与えたことはない旨主張するところ、報告がなされなかったとしても、ポイント加減一覧表の記載に基づき当然に賃金から控除できることになるものではないから(賃金を控除するのであれば、減給の懲戒処分等が必要となる。)、報告懈怠を理由に原告を含む従業員の賃金から控除がなされていなかったとしても、被告が原告を含む従業員に対して報告を求めていた(被告の指揮監督が及んでいた)ことが左右されるものではない

〔3〕原告が営業業務に従事している際に上司の同伴はなかった → 仮に、被告が主張するとおり、原告が営業業務に従事している際に上司が同行していないとしても、入社直後であればともかく、一定の経験を経れば、従業員が単独で営業業務に従事することは珍しい事態ではなく、被告とすれば、業務上の必要があれば、適宜の方法で報告を求めることも可能であったといえる。

〔4〕原告に対して、具体的な訪問先を指示していない → 仮に、被告が主張するとおり、被告が原告に対して個別具体的な訪問先を指示していないとしても、営業担当の従業員が、上司等から個別具体的な訪問先の指示を受けるのではなく、自らの活動・判断で営業先を開拓し、訪問するということは、営業担当の従業員として、一般的な業務遂行体制であるといえる。

〔5〕原告に対して携帯電話を貸与していなかった → 仮に、被告が主張するとおり、被告が原告に対して携帯電話を貸与していないとしても、適宜の方法で連絡を取ったり、報告を求めることは可能であり、実際、本件においても、既に説示したとおり、義務付けられていたか否かをさておくとしても、原告を含む被告の営業担当の従業員は1日3回の売上報告を電話で行っていたものであるから、被告の方から原告を含む従業員に連絡をとることは可能であったといえる。

以上からすると、被告が主張する〔1〕ないし〔5〕の事実をもって、原告に対する被告の指揮監督が及んでいないことになったり、被告が原告の労働時間を把握することが困難なものとして、「労働時間を算定し難いとき」に当たるものではなく、証人が、「会社として、従業員の労働時間はどうやって把握していたのですか。」という質問に対し、「できないです。事務員とかって、ずっと会社にいてる者以外は。」と答え、「できないというか、把握しようとはしてなかった、できなかったっていう認識ですか。」という質問に対し、「そうですね。要は、結果さえ出してくれればいいので、営業は。外に出てる間っていうのは、確認しようがないので。」と答えていることをも併せ考慮すれば、結局のところ、被告が主張する事情は、被告が、従業員の労働時間を管理する方策を講じようとすれば可能であったにもかかわらず、そのような措置を講じず、労働時間の管理を怠っていたことを自認するにすぎないというべきである。

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タイムカード義務付けと打刻の実績があれば同じ結論が導ける

使用者が、タイムカードは労安衛法上の状況の把握のためのものである、という主張をしたとして、それは意味がないか? 算定可能性が要件なのであれば、意味はないようにも思われる

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