2023年1月11日水曜日

川崎テクノリサーチ事件②・大阪地判R4.7.22・ジャーナル129-30

普通解雇有効

******

遅刻欠勤について

原告につき、平成30年6月の入社当初より、始業時刻直前の出勤や遅刻等のために始業時刻と同時に業務を開始することができないという問題が見られたため、被告が平成31年4月以降に原告の勤怠管理を厳格化させたところ、その後、令和2年1月までの約10か月間における原告の遅刻及び欠勤の回数は、合計27回に上った。このように、原告の遅刻及び欠勤の頻度は、被告の業務の円滑な遂行について悪影響を与えるのに十分なものであったといえる。 

被告代表者は、原告が令和2年1月8日に寝坊を理由に始業時刻の午前9時から40分もの時間が経過するに至るまで何の連絡もしないまま午前中に欠勤したことを受けて、同月9日、原告に対し、口頭で注意を与えたものの、原告は、その約1週間後である同月17日、再度、寝坊を理由に遅刻した。原告は、本件懲戒処分を受けて本件始末書を作成するに当たり、遅刻及び欠勤につき、「事前に遅刻や欠勤の理由を伝えて、貴社の承認を得た上でのことなので、反省することない。」と述べ、反省及び改善の意思が無いことを明らかにした。上記の原告の対応等に鑑みれば、原告には、度重なる遅刻及び欠勤につき、改善の見込みがないものと判断されてもやむを得ない。

これに関し原告は、寝坊や体調不良を理由とする遅刻に関しては性質上事後報告となっていたものの、それ以外の私用による遅刻及び欠勤については被告の承認を得ていたから特段問題はないはずであるし、寝坊を理由とする遅刻についてはうつ病に伴う不眠症が原因であって原告に酌むべき事情があり、こうした遅刻について、原告に改善の見込みがなかったとはいえない旨主張する。

しかし、別紙1「遅刻及び欠勤一覧」の記載からも明らかであるとおり、「私用」を理由とする遅刻には、事前に被告の承認を得ていたわけではないものも多数含まれているところ、仮に被告が原告による上記の遅刻を事後的に有給扱いにすることを認めていたとしても、上記の遅刻によって被告の通常の事業活動が阻害される結果となったことは明らかである。また、原告は、遅刻又は欠勤に先立って有給休暇の届出をした場合であっても、就業規則の定めに従って14日前までにその届出をしたことはなく、直前に届出をすることが多かったのであって、これにより被告の通常の事業活動が阻害されていたことに変わりはない。

また、仮に原告が何らかの精神疾患を発症しており、そのために寝坊が多くなっていたものであるとしても、当該精神疾患が業務上のものであると認めるに足りる証拠はなく、そうである以上、被告に対して事前に連絡することなく遅刻を繰り返していた点につき、原告に酌むべき事情があったとはいえない

以上のように、原告が多数回にわたって遅刻及び欠勤を繰り返していたことにより、被告の通常の事業活動が阻害されていたことは明らかであり、これに関して原告に酌むべき事情があったとはいえないところ、それにもかかわらず、原告は、前記のとおり、遅刻及び欠勤につき、「貴社の承認を得た上でのことなので、反省することない。」などと述べて自らの態度を改める意思がないことを明らかにしていた。上記の経緯に鑑みれば、被告において、原告には遅刻及び欠勤を繰り返す傾向を改善する意思がないものと判断するに至ってもやむを得ないというべきであり、これに反する原告の主張を採用することはできない。

勤務態度不良・協調性欠如

原告は、始業時刻直前に出勤したり遅刻したりするために、始業時刻と同時に業務を開始させることができないことも多かった。また原告は、ミーティングにおいて被告代表者及び他の従業員らの面前で居眠りをしたり、被告の社内でメルカリ等のサイトにアクセスして私物を被告の事務所に送付させたりすることもあった。このように、原告の勤務態度には、被告入社当初より、多数の問題点が見られた。これを踏まえて、原告の同僚であったEは、原告の入社当初より、被告における勤務に臨む姿勢等に係る原告に対する指導を繰り返し行っていた。

そして、原告が被告に入社してから約9か月が経過した頃、Eが原告を食事に誘った際、原告は、Eに対し、被告に在籍する目的は日本の在留資格を取得するためであるとの趣旨の発言をした。また、同時期頃、Eが原告に対して「もっと謙虚にならないと周りの人から信頼を得られないよ。誰からもアドバイスをしないようになってしんどくなるよ。」とのメッセージを送信したにもかかわらず、原告は、上記のEからの真摯な助言について、「あほなことを言ってるんだな。」としか受け止めず、自身の態度や行動を全く改めようとはしなかった。

上記各事実は、原告には、同僚からの助言を真摯に受け止めて、被告における業務に真面目に取り組もうとする姿勢が欠如していたことを示すものであるといえる。

原告は被告の業務で中国に出張したことを奇貨として、現地において日本の硬貨を安価で仕入れ、帰国後にこれを銀行で交換して差額を利得するとの要領による硬貨取引を行い、上記硬貨取引を行うために勤務日の午前中に銀行に赴き、そのために遅刻し又は休暇を取得していたものであるところ、原告が上記の理由により遅刻し又は休暇を取得した回数は、令和元年5月から同年11月までのわずか半年の間だけで合計16回に上っていた。したがって、原告による硬貨取引は、本業である被告における業務の遂行につき、少なからず影響を与えていたといえる。

また原告は、被告が顧問先に対して配布するKTR通信と題する冊子に掲載するために、上記硬貨取引に係る原稿を作成したものの、上記原稿の内容は、為替規制を回避するために人を雇って税関を突破したなど、被告代表者がその適法性について疑問を呈するのも当然といえるようなものであり、そのため、被告代表者は、原告の作成した原稿をKTR通信に掲載することを見送るに至った。

原告が上記の要領による硬貨取引から得た利益の額については証拠上必ずしも明らかでないものの、原告が行った硬貨取引に係る上記の各事実は、少なくとも、原告が被告の業務を軽視し、被告の業務について非協力的な態度を有していたことの表れであるといえる。

原告は、適応障害を理由とする休職期間中に友人に会いに行くとの理由で上海に出掛けた上、帰国時に検疫のためにホテルに隔離されることになった際、被告代表者に対し、自身がホテル内でくつろぐ写真やホテルの内装写真等を添付した上で、「飛行機降りた途端、政府に無差別ハイジャックされまして、14日間貸切の5星ホテルの個室に全員隔離検疫されています。」とのメールを送信した。また、原告は、被告代表者から休職期間の満了日が休職開始日から3か月後の令和2年5月21日までである旨を伝えられた際には、同人に対し、「え?6ヶ月じゃなかったですか?もうちょっと3ヶ月くらい優雅に紅茶飲みたいですよ。」とのメールを送信した。上記のような原告の態度は、被告代表者に対する配慮を欠くものであることが明らかである。

原告は、被告代表者に対して送信した上記各メールは、中国では上司と部下との関係が日本よりもフランクであることを背景とする単なるジョークであって、原告なりにユーモアを利かせたものにすぎず、それをもって原告の姿勢が不真面目であると評価することはできない旨主張する。

しかし、原告が被告代表者に対して送信した「え?6ヶ月じゃなかったですか?もうちょっと3ヶ月くらい優雅に紅茶飲みたいですよ。」とのメールは、休職期間が自分の予想よりも短かったことを捉えて、休職中の原告に対して休職期間の終期を通知してきた被告代表者に向けられた、被告の対応を揶揄するメッセージと捉えられても仕方がない。文面上相手を揶揄するものであるように見えるメッセージを単なるジョークとして軽く受け流すことができなかった責任を、当該メッセージの受け手である被告代表者に帰責させ、自らの行動によって誤解を与えてしまったたことを一切顧みようとしない原告の態度そのものに問題があるといわざるを得ない原告の主張する中国と日本との文化的背景の差異は、原告の態度の問題性に係る上記の結論を左右するものではない

加えて原告は、令和2年5月29日に本件懲戒処分を受けた際にも、被告代表者に対し、現在の自分の手取りは1500万円くらいあるので、職は要らないがビザが必要だとの趣旨の発言をしていた。

当時の原告の収入に係る上記発言の真偽の程は定かではないが、いずれにせよ、原告の上記発言は、被告の業務ないし被告代表者の立場に対する配慮を著しく欠くものであることが明らかである。

このように原告は、被告の業務を軽視し、他の被告の従業員らの助言を真摯に受け止めようとせず、被告代表者に対しても著しく配慮を欠く言動を繰り返していたものであり、被告在籍中における原告の勤務態度及び協調性には著しい問題があったものといわざるを得ない。

******

0 件のコメント:

コメントを投稿