始業時刻前の就労を認定
******
原告は、業務マニュアルにおいて前の勤務帯の者からの申し送りを受ける前にすることとされる業務(受け持ちの患者について電子カルテを確認し、行動計画を立て、薬剤等の準備をする業務)について、所定の始業時刻から始めると、申し送りの時刻までに終わらせることができないことを理由に早く出勤して業務に着手していた。
原告が電子カルテを確認するために使用するパソコンは、ナースステーションに設置された共有のものであり、このパソコンを業務外で利用することが許されていたとはいえないことからすれば、始業時刻前に原告がパソコンを使用すれば、上長である看護師長や他の看護師は、即時、容易に、原告が始業時刻前にマニュアル所定の業務を行っていることを知ることができるはずである。
平成30年2月1日から平成31年5月7日までの原告のパソコンのログイン履歴(甲8)をみても、原告はほとんど全ての勤務日において、所定の始業時刻より前に、当日最初のログインをしている。
そうであれば、看護師長は、原告が常態として始業時刻より前に業務を開始していることを知っていたと認めるのが相当である。
これに対し、看護師長が、原告に対し、始業時刻前に業務をすることについて禁じたり、やめるように指導をしたりした形跡はない。
そして、看護師長は、命令簿における時間外勤務命令の決裁権者であるところ、長期間にわたり、ほぼ毎勤務日、何らの異議を述べずに始業時刻前の労務の提供を受入れていたものであることからすれば、これらの業務は、被告(がんセンター)の黙示の指揮命令の下で行われたものと評価するのが相当である。
被告は始業時刻前の業務を命令したことはない旨主張するところ、確かに、原告の命令簿をみても、早出の時間外勤務が命じられた日はほとんどない。しかし、がんセンターにおいては、新人研修などの行事の準備のために早出を命じるときには命令簿により時間外勤務命令を出していたが、それ以外の早出については命令簿が作成されることはほとんどなかったものと認められ(証人A)、原告も早出残業についての申請の仕方は知らなかったと述べることからすれば、命令簿による明示の命令がないことをもって、始業時刻前の労務提供について、被告による指揮命令外のものであるということはできない。
以上から、原告のパソコンのログイン時刻(甲8)又は所定の始業時刻のいずれか早い方を実際の始業時刻と認める。
******
・マニュアルに沿うため、という理由
・頻度と態様
決裁権者は始業時刻前業務を知っていた
禁止・指導なし(ほぼ毎勤務日)
命令簿は形骸化しているから、命令簿がないこと自体は重視されない
→ 黙示の指揮命令がある
0 件のコメント:
コメントを投稿