2023年1月11日水曜日

川崎テクノリサーチ事件①・大阪地判R4.7.22・ジャーナル129-30

賃金減額合意の無効

******

本件賃金減額(令和元年7月分以降)は、原告の月額賃金を合計27万円から22万円に引き下げるものであり、賃金の減額幅は約2割にも上るから、本件賃金減額が原告に与える不利益は相当大きいものであった。

原告は、令和元年6月26日に行われた被告代表者及びCとの話合いの結果、最終的には本件賃金減額に同意したものの、上記の話合いの過程において、被告代表者は、原告に対し、原告の勤務成績及び勤務態度の不良を理由として、原告を正社員からアルバイトに変更する旨の打診をしていた。原告は、自身の地位を正社員からアルバイトに変更することによって日本の在留資格が取り消される可能性についての懸念を抱いたため、被告代表者からの上記の打診を拒絶したところ、これを受けて、被告代表者から本件賃金減額に係る提案がされるに至った。上記の経緯に照らせば、原告にしてみれば、仮に本件賃金減額に係る被告代表者からの提案を拒絶すれば、被告との間の本件労働契約の存続そのものが危ぶまれ、ひいては、日本の在留資格を取り消されるおそれがあるのではないかとの危惧を抱いたとしてもやむを得ない

なお、本件全証拠によっても、原告が被告代表者に対して無償でもよいので正社員たる地位を継続させてほしい旨述べたとの事実を認めることはできない。

本件賃金減額により原告が被る不利益の内容及び程度並びに原告が本件賃金減額に同意するに至った経緯等に鑑みれば、原告の上記同意が原告の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはいい難い

これに関し、被告は、減額後に異議が述べられなかったことや減額後の業務量や責任の程度等にも照らせば、本件賃金減額について原告の自由な意思に基づく同意があったといえる旨主張する。

しかし、本件全証拠によっても、本件賃金減額後の原告の業務量及び責任の程度が本件賃金減額前のそれに比べて約2割も低下したとの事実を認めることはできないし、前記で説示した経緯にも照らせば、本件賃金減額後に原告が被告代表者に対して抗議をしなかったとしても無理はないというべきである。

よって、本件賃金減額につき、原告による有効な同意があったものと認めることはできない

******

0 件のコメント:

コメントを投稿