2023年1月24日火曜日

JR西日本(岡山支社)事件・岡山地判R4.4.19・労判1275-61

 過失による定時運行遅れとノーワークノーペイ 賃金支払義務発生を肯定

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賃金請求権の発生根拠は、労働者と使用者との間の合意(労働契約)に求められるところ、労働者が債務の本旨に従った労務の提供をしていない場合であっても、使用者が当該労務の受領を拒絶することなく、これを受領している場合には、使用者の指揮命令に服している時間として、賃金請求権が発生するものと解される(前記前提事実のとおり、原告は、午前7時09分から午前7時11分までの間、全く労務を提供しなかったものではなく、本件は、労務の提供が履行不能となった事案ではない。)。

したがって、被告が、午前7時09分から午前7時11分までの間の原告の労務を受領したといえるか否かについて検討する。

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乗務員がいかに小カードに記載されたとおりに各時刻に所定の業務を遂行しようとしていたとしても、労務の提供が人間の活動である以上、一定の割合で、その遂行過程の一部に過失による誤りや遅れ等が生じ得ることは、被告においても通常想定されるものである。

いかに小カードで指定された各時刻に所定の作業を行うことが列車の定時運行のために重要であり、分刻みでの指定がされているとしても、被告が、過失によって生じた小カードの記載に反する労務について、その受領を予め一律に拒絶しているものとは解されず、むしろ、乗務員において上記記載に反する労務を行った場合には、一連の業務の中で直ちに小カード所定の労務内容に修正すべく行動することを求めているものと解するのが合理的である。

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被告は、午前7時09分から午前7時11分までの間の原告の労務を受領したものといえるから、当該労務の提供が、債務の本旨に従ったものであったか否かにかかわらず、当該労務について、被告の指揮命令に服している時間として原告に賃金請求権が発生するものと認められる。

****** 故意の事例

(水道機工事件・最判小1判S60.3.7・労判449-49)

原審は、右事実関係に基づき、本件業務命令は、組合の争議行為を否定するような性質のものではないし、従来の慣行を無視したものとして信義則に反するというものでもなく、上告人らが、本件業務命令によって指定された時間、その指定された出張・外勤業務に従事せず内勤業務に従事したことは、債務の本旨に従った労務の提供をしたものとはいえず、また、被上告人は、本件業務命令を事前に発したことにより、その指定した時間については出張・外勤以外の労務の受領をあらかじめ拒絶したものと解すべきであるから、上告人らが提供した内勤業務についての労務を受領したものとはいえず、したがって、被上告人は、上告人らに対し右の時間に対応する賃金の支払義務を負うものではないと判断している。原審の右判断は、前記事実関係に照らし正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

****** 故意の事例

(JR東海(新幹線減速闘争)事件・東京地判H10.2.26・労判737-51)

本件減速走行は、前記の運転士の義務、すなわち、各停車場の発着時刻どおりに各停車場を出発、通過又は到着するよう運転し、かつ、運転時の諸状況に適合した安全・快適かつ経済的な運転を行う義務に違反するものというべきである。

本件減速走行を予告しての就労の申入れをもって、雇用契約上の債務の本旨に従った労務の提供であると解することはできず、被告がその受領を拒否し、その労務にかかる賃金の支払を拒否したことは、正当なものというべきである。

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(カレーハウスピリピリ経営者事件・東京地判R2.3.3・判例秘書L07530258)

賃金は労働者が使用者に対して労働に従事したことの対価であるから,原告が本件カレー店の営業時間中に来店した客を追い返したり宅配の注文を断ったり味がおかしくて客に提供するべきでない料理を提供したりしたとしてその支払を拒む被告の主張(なお,そもそも原告が上記期間内の日に上記行為をしたとの具体的な主張自体ない。)は失当である。

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